
土曜日、天気晴れ。こうなると子供たちが黙っていません。どこかに連れていけの大合唱に押されて、仕事を嫁さんにまかせて出かけることにしました。
風も穏やかなので、ふと船に乗ってみようと思いました。子供たちに提案してみると大喜びです。行き先は内緒にしました。
市内からは車で20分ほどのところ、島根町加賀というところにマリンプラザしまねという立派な建物があります。一時期高速船レインボーが就航して隠岐と本土をつないでいました。今はここから潜戸遊覧船が運行しています。この潜戸遊覧船に乗ってみることにしました。

運行は9時から16時まで、1時間ごとに出航するそうです。かつてレインボーの切符売り場だっただけに立派な窓口がありますが、今はおみやげ品などがずらりとならんでいます。

料金は中学生以上1200円、小学生600円。未就学児は大人1人に対して2人まで無料で乗船できます。遊覧時間は約50分とのことで、ちょっと高いかなと最初は思いました。

夏には海水浴やキャンプで賑わう場所なのですが、5月の半ばはなんとなく人も少なめ。岸壁に釣り人も何人かいましたが、釣果はあまり良くない様子。施設には数年前から猫が住み着いているそうで、とても人懐こいやつです。
窓口には子供用から大人用まで救命胴衣がずらりとならんでいて、それを着込んで船に乗り組みます。乗客は、僕ら親子と他に3人ほど。あとは船長さんとガイドさんの二人が乗って8人で出港しました。貸切のような感じです。

船は最初に湾内をぐるっと巡ってから沖合に出ていきます。最初に向かったのは旧潜戸。ここは断崖が大きくえぐられて洞穴となっています。ここは水子を供養する場所として有名で、あの世と結ぶ賽の河原と呼ばれているそうです。ここに上陸するそうです。

船は近くの岸壁に接岸します。この波止場にはお地蔵さんが祀られています。ここから旧潜戸に参ります。

岸壁からトンネルが掘られていて、ここから洞穴へと向かうことができます。

トンネルの中にもお地蔵さんがいくつも祀られていて、かたわらにはぬいぐるみなども備えられています。

トンネルを抜けると賽の河原伝説の案内板があります。この伝説から、今では全国から水子の魂がここに集まってくると言われるようになりました。その供養をするためにお参りする人も多いようです。

洞窟の中から外をみます。ここから入る光で洞窟の中はぼんやりと照らされます。

洞窟の中にも何体もお地蔵さんが祀られています。そばには、おもちゃだったり、ランドセルだったり、そんなものもお供えしてあります。

あちこちに小さな石の塔ができています。ぼくたちも落ちている石を積んでお参りしました。

洞窟の最奥部から外を望むと得も知れぬ面持ちになります。霊的なことはあまりわかりませんが、やはり空気が重くて胸が苦しくなる感覚を味わいます。下の子とかはだいぶ敏感なのか、怖い怖いと言っていました。「ここは大きくなれなかった子供たちがいるのだから、君等は育っていることに感謝して石をつまなければいけないよ」と言いました。それくらい厳粛な空気にあふれていました。

ひと通り洞穴をめぐって、再び乗船し、新潜戸に向かいます。新潜戸は洞門になっていて、船はここを通り抜けます。ここは神話のお話しです。この地の神様である佐太大神(さだおおかみ)が産まれるときに母親である支佐加比売(ささかひめ)は流れてきた黄金の弓矢でこの暗い洞穴を射抜いたところ、岩を貫いて輝き、その故にこの地が「かが」と言われるようになったそうです。

この入口からまっすぐ正面にも洞門のある島があって、的島といいます。支佐加比売が射抜いた時にその先の島も射抜いたので、あいた穴だそうで、佐太大神はこの島を的に弓の修練をしたそうです。

洞門の入り口は大変狭いので、なるべく船の中心によってくださいとアナウンスされました。入口付近では水がパラパラと落ちてきます。この水はお乳の水といって、乳がでない女の人が浴びるとお乳がでるようになるとのことです。入り口は大変狭いものの、中はとても広く、よく声も響きます。子供たちは「やっほー」とか言って大声をあげて楽しんでいました。
洞穴をでると、近くの島を巡って港に帰ります。最初乗船料はちょっと高いかなと思ったのですが、けっこうクルーズも楽しめて上陸して洞窟内部も見学できるのでいい体験でした。もう少しお客さんがいるかなあと思っていたのですが、いい天気だったのに少なかったのは意外です。去年第三セクターを解散して、社団法人としての運営がはじまったと聞いていますが、もう少し観光客が増えてくれればいいのになと思いました。うちの子供たちは随分喜んだようで、また来たいと言っていましたよ。
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潜戸観光遊覧船~神話と神秘の郷・島根半島の景勝、島根町~