GC療法を受けるという選択

再びぼくは入院して治療を受けることにしました。手術後に残った(かもしれない)微小転移を叩いておくための化学療法を行います。予定では3週間の入院を2度行い、それで今回の膀胱がんの治療を完結させようと思います。

だいぶ悩みました。そもそも微小転移があるかないかはわかりません。もしかしたら、この治療は全く無駄かもしれません。また微小転移があったとしても、それは自分自身がもっている免疫力で撃退できるものかもしれません。人間は本来そういった自然治癒力を持っているものです。かたや、白血病に膀胱がんとふたつもがんを抱えたということは、そもそもが遺伝子変異が起きやすい、がんになりやすい体質なのかもしれません。つまりこの治療を受けたからといって、これで安心という保証はありません。

悩みだしたらきりがありません。がんなどの難しい病気の治療は、ギャンブルのようなものです。複数の選択肢から自分に最適なものがどれかは、やってみなければわかりません。馬券を買うときに馬のデータから、騎手の調子から、はては縁起担ぎまであらゆる情報を分析して買うように、治療についてもできる範囲で情報を調べいろいろな可能性を検討して、どうするか決めなければなりません。文字通りの命賭けなのですが、それでも外れることもあるのですからたまったもんじゃありません。

ただ、どのような結果が待ち受けるにせよ、大切なのは自分が納得すること、他のせいにしないことだと思っています。そのためには、誰に強制されるでもなく、自分の判断で治療方針を決めることができるのは良いことだと思います。

その点、今回の主治医をはじめとした医療チームを信頼しています。患者の話に耳を傾けてくれて、適切な情報を与えてくれ、治療の選択について主導権をこちらに持たせてくれています。人によっては、それでは不安になるかもしれませんが、ぼくのように長年患っているものにとってはありがたいことです。

五年後の生存率が7割8割あるのならば、こうした治療は受けなかったでしょう。しかし、今回はそれが半々程度になってしまったからには、少しでも生きのびる方に賭けておくべきだと思いました。使用する抗がん剤について、どのような作用をもってがん細胞を撃退するのかについても納得しました。また一定の成果があがっていることも理解しました。

今回受けるGC療法は、ゲムシタビン(Gemcitabine)とシスプラチン(Cisplatin)というふたつの抗がん剤を使うもので、15日間に4回点滴を受けます。骨髄抑制や吐き気などの副作用がありますが、従来行われてきたMVAC療法よりもだいぶ楽だということです。かつて白血病だった時のしんどかった記憶があって、それが怖かったのですが、鬱になるようなことはほとんどないと教わり、前向きな気持になれました。副作用が軽ければ治療を完遂できる可能性も高く、それだけ効果が期待できます。

前に中途半端な気持ちについて書きましたが、自分の中ではその気持ちにカタをつけたいと思っています。このまま時間を過ごせば、いつまでも、治療を受けるべきか受けざるべきかという思いを抱え、転移に怯えることになるだろうと思いました。効果のあるなしはおいても、まずは自分が納得する形でとりあえず治療を完結させる。そうすれば、気持ちの整理がつき、日常生活に戻れるのだと思います。

そして、嫁さんがしっかりしてくれていることが、治療を受けようという一番大きな理由になりました。短期間の引継ぎだったにもかかわらず、日常業務をこなし、かえってぼくよりもしっかり仕事をしてくれています。家のことも、ぼくの両親と協力しながら、なんとか毎日が回るような仕組みを作ってくれました。再び負担をかけるのは忍びないですが、これなら再び長期に入院しても、安心して任せられると確信しました。

治療に向けて自分の命をBetしたからには、そこに向けて準備をととのえるだけです。いざ治療が始まれば、予想外の新しい困難も待ち受けているかもしれません。けれども自分の選択に自信を持って、乗り越えていきたいと思います。

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