決断の日

2月に退院してから半月。どのような治療方針で臨むのか、3月の診察時にぼくは結論を出すと約束し、3月6日、その約束の日はやってきました。この間に迷いはやはりありました。今も迷いはあります。しかし決めなければ前に進まないこともわかっています。いつまでも先送りにできることではないこともわかっています。

ぼくは予定されていた血液内科の診察を受けました。いつもは「どうですか」「かわりないです」の受け答えで始まる診察も、今日はそういうわけにはいきません。診察するよりも、どうしてもがんの話のほうが多くなります。
「ようやくグリベックのおかげでこの病気も完治するかという段階になったのに、また命を賭けることになるとは、因果な人生です」ぼくは自虐的に言いました。
「うん。まあ病気が重なるよりも、ひとつひとつ片付けていけると思って。泌尿器科とも話をしましたが、取りきれば完治が見込めるということでしたよ」主治医はそう言って励ましにもならない言葉をかけてくれるのでした。

泌尿器科に行くとすぐに呼び出しがかかり、主治医と対面しました。先週も予定外に泌尿器科を訪ね、疑問点などを聞いていたので、今日は結論を告げるだけです。しかし、今日、今ここでのぼくの結論によって進むべき人生の道が定まり、他の選択肢が消えるという現実は重くのしかかってきます。それがどういう結末を迎えようとも、自分自身で断を下さなければならないのです。医者もそれを当然求めるのですが、何より自分自身がそうしなければならないと考えているのです。

ぼくは、膀胱を全摘し小腸で代用膀胱を作る手術を希望しました。

それにしてもあまりに不思議な感覚ではないですか。うん、確かに秋に血尿はあった。そしてその結果、膀胱内に腫瘍があった。ぼくもこの目で見た。そしてそれを取った。その後、その後は痛みもなく何の不具合も感じないというのに、これからまた大手術をして、その臓器を取ってしまわなければならないとは!

入院のスケジュールと治療計画について具体的な話を聞きながら、どこかモヤモヤした感覚を感じないわけにはいきませんでした。別室で看護師さんが入院の手続きについて説明をしてくれます。それは一種のプロトコルですから前回と同じような説明が淡々と続きます。
「入院に際して他に不安なことはありますか?」と看護師さんが聞いた時には思わず笑ってしまいました。
「不安ですか…そりゃあ、不安だらけですよ。不安でない人がいたら見てみたい」

一ヶ月後、どうなっているか想像もつかない。けれども、結論を出した以上はそこにむかって行くしかない。他の人のせいにすることもできない。自分自身が自分の人生をコントロールしているんだという気持ち、ただそれだけを頼りにこれからやっていくより他ないのです。

入院は来月一日です。

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