ものぐさじじいの来世

嫁さんが小学校で読み聞かせのかかりをしているので、たまに絵本を図書館から借りてきます。うちの子供たちは、借りてきた本を読んでくれとよくせがみます。特に下の子はすぐ読んで読んでといいます(もう今春小学校なんだから読めるようになれよw)。

先日もこれ読んでと一冊の絵本を持ってきたので、もうお父ちゃんは寝るんだが…と思いながらも「ものぐさじじいの来世」という本を読んでやることにしました。

しかしなんという絵本でしょうか。ものぐさで一日中布団にくるまっているようなおじいさんの話なんですが、絵がすごい。赤っぽい色を主体にした毒々しい絵柄で部屋がかかれています。床には芋虫やカタツムリが這い、蜘蛛の巣が張った部屋で、この世のものとは思えないおじいさんが布団にくるまっています。くるまっている布団にはキノコが生えているではありませんか。

こりゃまたひどい絵本だなと思いながら、「あるところに、ものぐさじいさんが住んでいました。じいさんは、若いときから、手足を動かしたり、人にあって話をしたりすることを、ひじょうにものぐさがって、いつもじっとしていることが好きでありました。…」と声に出して読んでやりました。

するとどうしたことでしょう、とっても読みやすい。文の区切りも、言葉の並びも素直で、大変読みやすいのです。抑揚をつけてやるのが楽しくてしようがない。文章をしゃべっているのに曲が流れるがごとく、音がポンポン響いている感じなのです。声色を変えたり、あえて句読点を外してみたり、歌うように読んでやると下の子に大受けでした。

ひどいと思った絵柄も、いつの間にかおじいさんの表情がやわらいだものに見えてくる不思議な魅力がありました。

一体誰がこんな文を書いたんだ。本を読み終わって興味深く作者のところを見ると小川未明の作でした。なるほど小川未明、日本のアンデルセンとも言われる作家ですが、声に出しても読みやすいとは。昔の作家はこんなところまで作り込んでいるのかしら。

お話の内容はなかなか深いです。小川未明の本は、内容がどこかつき放たれた感じがするんですよね。あとから考えさせるというか、そういうお話しが多いような気がします。まあたぶん子供にはそんなことは関係はないのでしょうけれども、もう少し大きくなって、父ちゃんがあんな話を読んでくれたなと、また読み返してくれたらいいな。

絵本で大事なことって何かなあと思いました。ぼくは子供によく絵本を読んでやるようにしているのですが、大人が読んでこれはいい、と思った本が子供には受けないこともあります。綺麗な絵だなあと思って読んでもダメで、子供が選ぶのはなんだか描き殴ったような絵だったりすることもよくあります。

でもなんだかんだ読んでやるうちに、読んでいてリズム感とか躍動感のある文章が大好きだということがわかってきました。深い内容などはわからないかもしれないけれど、音として捉えることで、そのフレーズが印象に残ることになるようです。だから擬声語とか、繰り返しの言い回しとか結構受けます。

読み聞かせというのは、お話しの内容を理解してもらうよりも、言葉遊びのひとつみたいな感じでやればいいのではないかなと思っています。そうすれば、大人も気楽に楽しめますし。そしていつか言葉の面白さに気がついて、自分から読んでくれたらいいなと思うのです。

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