夕ごはんの時間になったので仕事を終えて上がってみると、部屋ががらんどうでした。こたつは片付けられて、窓が開け放たれてました。嫁さんはプンスカしているし、長男はいないし、次男は泣いていました。
事の発端は長男が自分のミニカーをなくしたそうで、それを次男に探させたあげく、それでもないので、次男のミニカーを取ってしまったそうです。長男は「これは交換したものだ」と言いはり、次男は「あげてない」と言いはり、やがてパンチキックの応酬となったそうです。怒った嫁さんは「ケンカするならおもちゃは全部捨てる」と言って一切合切ゴミ袋に捨ててしまったのでした。次男は泣き出し、長男は家を飛び出したところにぼくが帰ってきたというわけです。
ぼくが帰ってきたので、夕食の茶碗が並べられましたが長男はいません。嫁さんは「帰ってこなくてよろしい」と怒っていますが、そういうわけにもいきません。次男は「お兄ちゃんがいなくなったらどうしよう」と言っています。二人で探しに行きました。
長男は近くの駐車場に続く階段の上で、薄い普段着に裸足のまま、ふてくされていました。
家に帰り、なぜ怒られているのかわかるかと聞きました。それはわかると。
「悪いのは母ちゃんか」「いいえ」
「悪いのは弟か」「いいえ」
「それでは悪いのはお前になってしまうが、それでいいのか」「はい」
「ならきちんと謝れ」
長男は母親に「ごめんなさい」と言うと突っ伏して泣きました。
嫁さんは「まだ弟に謝ってないじゃないか」と畳み掛けましたが、本人のプライドがあるのでしょう、長男はけっして弟には謝りません。「ミニカーを取ってしまったでしょうが!」。
すると、次男が悲しそうな顔で言いました。
「あれは交換したものだから、いいよ」
嫁さんは呆れた顔をしました。その言葉は兄がこれ以上叱られないように、かばって言っていることが明白だったからです。
しかしそうではあっても、今度は次男に問いたださなければならなくなりました。
「本当に交換したのか」「はい」
「お兄ちゃんをかばって言っているのか」「いいえ」
「そしたらお前は嘘をついたことになるがどうだ」「嘘をつきました」
「本当に交換したのならケンカなんかしないはずじゃないか」「ごめんなさい」
涙を拭き拭き、とうとう最後まで兄をかばいきったのでした。
嫁さんは「お前は優しすぎる」と泣き出しました。叱っているこちらのほうが後味が悪くなってしまいました。思わぬ弟の弁護で、結局そのまま沙汰止みになり、冷えたご飯をみんなで黙々と食べました。
プライドだけは高く絶対に頭を下げない長男、誰にでも優しくお人好しにもほどがある次男。足して2で割ったらちょうどいいのに。
願わくば弟の優しさが兄に届きますように。
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いつか私にもそういう体験をする日がくるのでしょうか。
興味深く拝読いたしました。
お読みいただきありがごうございます。子どもを持つと本当に色々と教わることが多いです。
つらいこともあるけど、楽しいこともいっぱいです。