「ホームページ」を閉じるとき

ずいぶん昔に作った自分のサイト(2011年3月31日ころまで閲覧可能)をこの度閉鎖します。サイトといっても、そう昔はみんなホームページと言ってましたね。「ホームページ」を閉じます。

このページは、ぼくが1996年に慢性骨髄性白血病を患い、治療を通して感じたことを2000年頃に綴ったものです。Yahooにも登録されたせいか、いまだにホームページを訪ねてくださる方がいて、感想をいただくこともあり、本当に感謝しております。

しかし、全く更新もしていないまま過ごすこと10年。気持ちをストレートに綴った文章はきっと患者さんの気持ちに寄り添えるものと思いながらも、すでに情報は非常に古くなってしまったのも事実です。また、投薬や検査はあるもののすっかり日常生活が不自由ない自分が、すでに白血病という病にかける情熱を失ってしまったのも事実です。

そんなわけで、このたびレンタルサーバー屋さんから年度契約更新のお知らせをいただいたのを機に、一区切りつけようと思うようになりました。

ぼくがこのページを作ってから、慢性骨髄性白血病の治療は大変な進歩をとげました。その最終話で書いたグリベックは日本でも認可され、インターフェロン注射という肉体的にも精神的にもつらい治療から患者を解き放ち、また劇的な治療効果をもたらしました。この薬によって、大半の人にとって慢性骨髄性白血病は少なくとも「必ず死ぬ」病気ではなくなりました。

ただし、グリベックは非常に高価な薬であり、患者にとっての金銭的負担がとても大きいのが問題です。実際にグリベックの購入費用が工面できず、治療をあきらめる例もあり、患者団体は公的助成を求めています。

おかげさまでぼくもこの高価な治療薬によって命を長らえて、ここまで暮らすことができました。日常生活も不自由はなく、幸せな家庭にも恵まれ、すっかり病気について意識することがなくなってきました。

幸い、ホームページの内容は患者コミュニティサイトライフパレットさんにも収録していただき、サイトが消滅しても書いた文章はこのインターネットの中に残っています。また、自分のPCにもバックアップがありました。当該のサイトは閉鎖しますが、このブログでもカテゴリーを作って今後引き継いでいきたいと思います。

それは次のような理由です。

ぼくはこうしてそのレンタルサーバーとはまったく別のサイトにこうしてブログを持ったり、twitterやfacebookを使ってきましたが、自身が作った白血病のページについてはほとんど公言をせずにここまでやってきました。twitterなどでは「今日は検査だ」などとつぶやいていたので、親しい人などには少しずつ知らせてきましたが、おおっぴらには病のことは言ってきませんでした。

それは、もう自分が病人だと思われたくなかったのもあります。まったく別人格としてインターネット上では活動したかったし、すでに新たな地盤を築き、会社経営という社会的責任のある立場になっている今、病気を公表することのリスクを避けたいという思いもありました。特にfacebookでは現実の人格とインターネットの人格が融合しています。思わぬ損失や差別を被るかもしれません。

しかし、ぼくはやっぱり自分を偽るのをやめようと思います。

twitterのあるフォロワーさんが突然マルク(骨髄穿刺という検査)の写真を載せたことがありました。ぼくはピンときてDMを打ちました。果たしてその人は今なお治療が非常に難しい血液疾患でした。

どんな病気でもそうですが、治療の難しい病となった瞬間にそれまでの生活は一変してしまいます。その気持ちが痛いほどわかるのにぼくは何もできませんでした。そういう人を見ながら、自分は血液疾患なんて全然関係ないと虚勢を張ることができるのか、病を知らない健康な成人として楽しく振る舞えるのか。

ぼくはやっぱりいつか書いたように、インターネットの世界だけ別人になることはできないと思いました。感じた無念さ、悲しみ、苦しみ、その気持ちを偽ることはぼくにとってとてもつらいことでした。ぼくは救うことはできない、けれど理解できる人でありたい。

ここでぼくが自分の病について公にするのは非常に勇気がいることです。最初はこのページだけひっそりと更新しておこうと思いました。でもやっぱりtwitterやfacebookなどにも流すことにします。おおっぴらにしてじゃあ何ができるのか、それもわかりません。それでも昔「ホームページ」を作ったことを証しておきたいと思います。そして、過去に感じた自分の思いは、少しずつこちらでも残しておきたいと思います。

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「ホームページ」を閉じるとき」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: fumiton.nyanta.jp » 新たな病状の告白をするにあたって

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