我が家には手入れの行き届いていない庭があります。去年までアイビーに覆われた木のフェンスが敷地を囲んでいたのですが、いよいよ傷んできたので、すべて取り払ってしまいました。
今までフェンスの陰になってやや暗かった庭が、にわかに明るいものになりました。あんまり見通しの良い庭というのも、なんだか落ち着かないものです。手入れしていないのが、外からはバレバレです。
日当たりがよくなったせいか、フェンスの脇に植えていた地味な色のクリスマスローズが、今年は早くに花をつけたように思います。十数年前に植えた時は一株だったのが、いつの間にか二株になっていました。我が家と相性が良かったのか、ほったらかしでもこうして毎年花をつけてくれるのには感心します。
人間の方はまだまだ寒いと思ってはいたのですが、植物は季節の変化を必ず感じ取って、毎年同じように花をつけるものだと感心します。それらはただ時節に合わせて花を咲かせ、やがて実をつけ、時が来れば枯れていきます。そこになんの思いもなく、ただ自然の移りゆくままに命をつないでいます。
人はいけません。人生の終わりに向かって、何かしらの未練を残します。「また春がやってきたなあ」と気楽に言うけれども、あと何回この言葉がつぶやけるかと、はたと思い至り愕然とします。すでに折り返しをとうに過ぎた身には、喜びよりも侘びしさを春の訪れに感じてしまうのです。
未練がましい自分には、植物の淡々とした振る舞いが美しく、また羨ましくもあります。ぼくもまた虚心に運命を受け入れることができるようになるでしょうか。けれども、その虚心に向かうにしても、何かしら小理屈をつけて自分を納得をさせなければならないのです。
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