膀胱がんの手術から2年半経ち、ずいぶん体調も回復してきたのですが、やはり膀胱を摘出しているので、排泄だけは困難が残っています。
体の中には小腸を切って袋にした代用膀胱が入っていて、腎臓からの尿はこの代用膀胱に溜められて尿道を通って排泄されます。仕組みはこれまでとほとんど変わりませんが、この代用膀胱は、本物と違って神経が通っていないので、明確な尿意もありませんし、自律的に縮めたりゆるめたりすることができません。
なんとなく下腹が重たい感じが、言ってみれば尿意になります。ただ、代用膀胱を腹圧をかけて押しつぶすようにしないと、うまく排尿ができず、残尿感が残ってしまいます。座ると腹圧がかけやすいので、出先でも洋式便所を探すようになりました。
本物の膀胱は脳が伸び縮みをコントロールしています。ですから、膀胱の筋肉を緩めるとともに尿道の筋肉を閉じて尿が勝手に漏れないようにしています。けれども、代用膀胱ではそうはいかないので、尿道の筋肉のみでせき止めています。
退院してからしばらくは、このコントロールがうまくできず、ちょっと体をひねったり下腹に力が入っただけで、尿が漏れることがありました。しかし、そのうちに体が慣れてきて、日中は自分の意志でコントロールができるようになったのです。
ただ、夜間は意識ができないため、尿道の筋肉が緩んで尿漏れをすることがありました。子どもの夜尿のように大いに漏れることはないのですが、わずかに漏れただけでも気持ちが悪いものです。そのため、夜寝るときには大人用のおむつを履いて寝ておりました。
こればかりは自分の意識の及ばないことなので、今後も仕方のないことかなと思っていたのですが、不思議なことに、この夏くらいから尿漏れしないようになったのです。ひとつには代用膀胱の容量が大きくなったこともありましょう。4時間程度は特に我慢することもなく尿をためられるようになってきました。それと、寝ていても排尿すべき時に自然と目が覚めて、わかるようになってきたのです。それはどういう作用かわかりませんが、神経の通っていないはずの代用膀胱の容量を脳が感知して指令を出しているようにも思えます。
思うに、人間の体というのは、機能を失ってもそれを補完するようになっているのではないでしょうか。目の見えない人は、聴覚や触覚など他の感覚器官の反応が飛び抜けて鋭かったりする例を知っています。友人のおじさんは胃を切除したけれども、食道が胃のように袋状に変化したそうです。本当に不思議なものです。
この10月くらいからはいよいよおむつをやめてみました。そうして、2カ月ほど立ちますが、どうにかおねしょをしないですんでいます。大人用おむつは枚数が少なくて値段も高いですし、何より尿漏れの気持ち悪さから解放されるのは、生活の質を向上させてくれました。
ぼくの、今年一番良かったニュースは「おむつがとれた」ということですね…まるで子どもですが…(^_^;。
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