手術をしてから2年半になった

がんになるとよく5年生存率がどうのこうのといいます。がんとなってから様々な治療を行うわけですが、がんが取りきれなかったり、あるいは別の部位に転移したりして、残念ながら治療のかいなく亡くなられる方がおられます。やはり1年、2年で亡くなる人は多いです。

それがだいたい5年位経つと、そのがんが原因で亡くなる人が少なくなってきます。ですから、5年経って生き残っている人は、まあがんを克服したということになるようです。そこで生き残っている人の割合が、5年生存率というわけです。

いざ患者になると、その5年生存率が気になって仕方ありません。5年生存率は、どんながんであるか、またそのがんがどれほど進行していたかによってもかわります。ですから、いろんなサイトで調べて、自分の病状と照らし合わせ、その値の高低で、なんとなくホッとしたり、絶望したりするわけです。

ぼくの場合、膀胱がんのステージⅢ。調べ方によって多少数値は違いますが、その5年生存率は4割といったところのようです。どのくらいの数字が、安堵と絶望の間にあるのかは人それぞれなのでしょうが、ぼくはそれほど落胆はしませんでした。ともかく5年乗り切れればいいなと思いました。

もし、反対の6割の側に入るとなると、その原因は再発、転移ということになります。そこで、半年に一度CTを撮って、再発や転移がないか調べています。5年間で都合10回のCTを受けて、それがすべてパスしたらまず安泰というわけです。

その5回目のCTを先日受けました。つまりがんの手術をして2年半が経ったのです。おかげさまで、再発、転移の兆候もなく、腸管で作った代用膀胱も尿経路も問題ないという診断を受けました。

やった5連勝だと思いました。そして2年半無事だったと思うと、半分まで来た、なんて思いました。あと半分か、なんて思ってしまうわけです。でも、そんな区切りは実は無意味なんです。

とかく区切りの数字を作りたくなるのは、人間の性でしょうか。5年生存率にしても、5年じゃなくてもいいわけですし、それが何割だからどうこうというのは、患者個人にとっては100か0かしかないわけで、まったく無意味な数字です。ぼくだって、今までよくたって、次のCTで転移が発見されれば、たちまち窮地に陥ります。それでも、何か区切りを見つけてしまうのですね。

気にしない、というのはなかなか難しいことですが、生存率がどうとか何年とかいう数字に振り回されないようにしようと思っています。

それに5年生存率も、時代が移るとドンと高くなることだってあります。例えば、およそ20年前にぼくが慢性骨髄性白血病になった時に、5年生存率は約5割と言われました。今はそれが9割にまであがっています。とても効果的な薬が発明され治療に使われるようになったからです。

ぼくが5年生存率4割と聞いてさほど落胆しなかったのは、その確率が自分自身にはあまり関係ないということを白血病で経験していたからかもしれません。

がんであろうが、健康であろうが、5年後のことなど誰もわかりません。大切なのは、今生きていることを喜び、その日その日を暮らしていくことだと、2年半経った今、自戒をこめて思うところです。

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