スマホがあるのにフィルムカメラを買うようなもの
このたび、ポメラDM200を買いました。よくポメラを買う理由に、ネットに接続できないので集中力が途切れないとか、開けばすぐに書けて思考を中断しないとか、格好のいいことが言われますが、ありゃあ言い訳です。
iPadだって4万円で買えるこのご時世に、ただテキストを打つだけの機械に、5万円という大枚はたいて買うことの後ろめたさといったらありません。そこを克服して買うためには、自分を納得させるもっともらしい理屈をつけなければならないのです。
今は、スマートフォンやタブレットでなんぼでもテキストを打つことができます。そこであえて、こうしたテキスト打ち専用マシンを買うのは、今の時代にあえてフィルムカメラを買うようなものです。露出やピントをあわせ、現像まで含めた写真を撮るという行為に価値を見いだす人が、普通の人なら信じられない価格でカメラを買うのです。ポメラも、テキストを打つ「だけ」の部分に価値を見いだす人が、買うのです。それでよい文章が紡げるかどうかはまた別の話ですが。
以前の機種は本体がべたつく欠点が…
ぼくもまたテキストを打つだけのマシンに魅力を感じ、初代DM10が発売されたときに飛びついて、ずっと使ってきました。のちにDM20に買い換えもしました。それくらいポメラのコンセプトは好きです。
けれどもDM10、DM20には重大な欠点がありました。本体表面を覆っているラバーコートが加水分解しやすかったのです。変換精度が悪いとか、入力文字数が少ないとかいう欠点をぼくはあまり気にしませんでしたが、本体がベトベトするのには耐えられませんでした。
結局べたつきに嫌気がさして起動することがだんだんなくなってきたDM20。その後、iPadなどのタブレットを持ち歩くようになり、後継機を買うことはありませんでした。
タブレット、PC、どれもしっくりこない
ぼくの場合外出先で文章を打つ機会がそこそこあって、それこそiPadとBluetoothキーボードの組み合わせでテキストを打っていましたが、どうもしっくりしない。多分にiOS独特の漢字変換の面倒くささみたいなのが影響していたのかもしれません。最近は、もっぱらMacBook Airを持ち歩いています。入力環境は非常によく、原稿書きから仕上げまでその場でできるのはとてもよいです。けれども、11インチのMacBook Airといえども、やっぱり重くてかさばるのは否めません。
この一ヶ月くらいやたらめったら報告書や意見書を書く機会があり、その下書きを書くために常にMacBook Airを持ち歩くのがしんどかったのです。そこで、もう一度ポメラを使ってみるか、と思いました。最近ようやくDM200も値段がこなれて(とはいえやっぱり高いですが)きたし、ネット通販のポイントもだいぶたまっていたので、思い切って買ったのです。
DM200のよいところ
久しぶりのポメラは大変進化していて、びっくりしました。
折りたたみ式は案外よい
二つ折りのポメラははじめてなんですが、これは良いなと思います。DM10やDM20はコンパクトに見えますが、嵩が高くなるので案外鞄に収まりが悪かったです。DM200は長辺が少し長くなったトラベラーズノートみたいでもあり、ボディバッグなどにも収まりがよいです。また文字入力するために、DM20はまずキーボードを組み立てる作業があり、案外面倒くさいものでした。天板を開けるとすぐに文字入力ができるのは良いです。
内蔵バッテリーもよいと思う
賛否両論ある内蔵バッテリーですが、ぼくは良いと思いました。充電はMicroUSBでできるので、モバイルバッテリーから充電ができます。スマホを持ち歩いていれば、モバイルバッテリーも持ち歩いているわけで、それさえあれば電池切れを気にする必要はあまりありません。従来機より駆動時間が短くなっているとはいえ、一日使い回してもバッテリー切れになるわけじゃなく、切れそうになったらモバイルバッテリーで充電すればよいのです。
画面がきれいなのが良い
画面が広く、高精細になったので、一度に表示できる文字数が増えました。フォントもアウトラインフォントになり、文字を小さくしても視認性がよくなりました。書体はゴシック体のほか明朝体も選べます。そこまで表示にこだわりはないのですが、字が見やすいことはやっぱり入力していても気持ちがよいものです。
ATOKがマシになり、キーカスタマイズもある程度できる
搭載されているATOKもだいぶ進化しました。PCで登録した辞書をインポートして使え、変換効率も良くなったので、PCと同じような感覚で使うことができます。
すべてのキーをカスタマイズできるわけじゃありませんが、ある程度のカスタマイズも可能です。ぼくはPCでCapsLockにCtrlを割り当てて使っているのですが、同じように換えることもできます。同様に無変換キーを全角/半角に割り当てると、指を伸ばさなくても良いし、Macと少し操作を似せることもできます。
ニッチな製品なので買うかどうかは迷った方がいい
総じて以前よりもだいぶ使い勝手が増した気がします。重量もフットプリントもMacBook Airに比べてだいぶ小さくなったので、気軽に持ち出すことができるようになりました。この下書きもDM200でここまで書いてきましたが、ストレスもほとんど感じませんでした。
ただ、ポメラはあくまでテキストエディット専用機です。いくつか作成したテキストを外部に送る手段はありますが、基本できるのはテキストを打つだけです。価格もこなれてきたとはいえ、未だ3万円以上します。3万円あれば、結構いい感じのAndroidタブレットが買えるということは頭に入れておくべきです。相当に人を選ぶマシンだと思います。